誰もが自由にキャンプを楽しめる世界の実現へ。夢に向かって走り続ける理学療法士キャンパー

キャンパー図鑑

ネルデザインワークス製ケーブやプレテント製ベアロックなど、マニアックなキャンプ用品でサイトを設営する尾崎さん。テント内に並んだギアの数々は、どれも一家言あるものばかり。一方で理学療法士という立場から、障がいのある人にもキャンプを楽しめる環境を整備したいと、常々考えているとも。自分だけが楽しむのではなく、誰もが自由にこの素晴らしい世界を楽しんでもらいたいというその想いは、少しずつ実現に向けて動き始めている。

スタイリッシュキャンパー図鑑

▲お気に入りのフィールドである「瀬戸内海の森キャンプ場」に愛用するマニ
アックなキャンプ道具を並べてくれた尾崎さん。主幕はネルデザインワークス製ケーブ。リビング用にプレテント製ベアロックを設営してくれた。

障がい者でもキャンプを楽しめる環境を作りたい!

岡山を拠点に活動する尾崎凌さんの夢は、健常者には想像もつかないようなものだ。

普段は医療福祉の現場で活躍している尾崎さん。学生時代から始めたキャンプは、趣味のひとつとして社会人になっても暇を見つけては楽しんでいた。

5年ほど前からは使用するギアにもこだわりを持つようになり、道具が増えるのと並行してキャンプの頻度も増加。気がつけば入手の難しいガレージブランドをズラリと並べるほどになり、同じ境遇の人々が“泥沼”と称するディープな世界へ魅了されていった。

以前は家と職場の往復ばかりで、仕事とプライベートの切り替えが上手にできなかったという尾崎さんだが、頻繁にキャンプを楽しむようになったことで、心のリセットがちゃんとできるようになり、生活にもメリハリが生まれたそうだ。

そんな経験から、職場で相対する障がい者にとっても、“体と心のリハビリテーションとしてキャンプは有用ではないか?”と考えるようになり、いつしか障がい者も一緒に参加できるイベントや、誰もが使いやすいキャンプ場を手掛けたいという夢を描くようになったという。

「クルマ椅子を使っている人がスムーズにキャンプを楽しめるようにするには、まずキャンプ場をバリアフリー化しないといけないですよね。クルマ椅子を基準にすると、一般的なローテーブルだと低すぎるし、組み立て式のテーブルだと車椅子が当たってしまうものも多く……。焚き火台だって、健常者にはちょうどいい高さでも、車椅子だと低くて使いにくいんです」。

フィールドだけでなく、障がい者にとってはギアひとつとっても、健常者とは違う視点が必要だと、尾崎さんは語る。

ゆったりと焚き火を囲みながら、最近は“誰にでも使いやすい道具とは?”ということを考えることが多くなったそうだ。

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▲念願かなって手に入れたというネルデザインワークス・ケーブ。スタイリッシュな佇まいだけでなく、入口に立ち上げがないため「車椅子でも出入りしやすそう!」。

作者が込めた想いを馳せながら
静かに更けていく夜を楽しむソロキャンプ

昨年手に入れたネルデザインワークス製ドームテントのケーブは、こうした物思いに耽るにはもってこい。まるでかまくらの中にいるかのように、外界との適度な遮絶感を味わいながら、静かな休日を過ごすお気に入りの幕として愛用している。

普段のキャンプスタイルを再現してもらったこの日は、そのケーブに加え、プレテント製ツインポール型シェルターのベアロックを使ってリビングスペースを展開。

フロントはざぁ~ッス製ポールをアレンジしてオープンスタイルにし、ゆったりとしたコクピットスタイルのリビングをこしらえてくれた。

そんな尾崎さんの愛用品の多くはネルデザインワークスやアシモクラフツなど人気ガレージブランドの木製品が多い。

手仕事で生み出される道具に感慨を受け、最近はイベント会場などで作り手の方に合い、モノづくりに対する考え方などを丁寧に聞いているそうだ。

「一つひとつの製品に思いを込めて製作している作者の方々から、モノづくりに対する考えを聞いている内に、自分でもモノを作る側になってみたいと思うようになりました。キャンプ道具はもちろん、いつか福祉用具の製作なども手掛けてみたいと思っています」と、尾崎さんは語る。

誰もが自由にキャンプを楽しめる環境の実現を目指している尾崎さん。その第一歩となる障がい者向けのキャンプイベントは、現在開催に向けて鋭意進行中だというから、そちらも楽しみだ。

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▲シェルターとして使っているというプレテント製ベアロック。フィールドでは他のキャンパーとお互いの愛用品について語りながら、楽しい時間と共に夜が更けていくそうだ。

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▲作り手の想いが宿った製品に惹かれるという尾崎さん。愛用のテーブルの上には定番のジンカップがずらりと並んでいる。

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▲ネルデザインワークス・ケーブのテント内。ソロキャンプ用の寝室としてはちょうどいいサイズ感。適度におこもり感を味わえる空間設計もお気に入りのポイント。

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▲hxo製テーブルは、2台を連結してシェルター内のメインテーブルとして使用。 ネルデザインワークス製のアルダッチも愛用する。

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▲焚き火スペースはサンゾー工務店のロダン・ハンゲツを中心に設営。チェアはマウンテンリサーチ製シートでカスタムしたカーミットチェアだ。

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▲キャンプにハマり始めた頃から少しずつ買い足していったというネルデザインワークス×アシモクラフツのギア類。今も大切に使い続けている道具ばかりだ。

Camper:RYO OZAKI
スタイリッシュキャンパー図鑑岡山県在住の理学療法士。学生時代からマイペースで楽しんできたキャンプが、ギアに凝り出して一気に深化。人気ガレージブランドのギアを収集してアウティングキャンプに参加したことで、数多くの作り手と出会い、より一層ギアへの愛着が深まったという。奥さんが大の虫嫌いということもあり、普段はソロキャンプが中心。
Instagram:@ryo.camp1201

一つひとつに作り手の想いが込められた
ハンドメイド製品が中心のギアコレクション

尾崎さんの愛用品は、どれも作り手の想いが推し測れるような作品が中心だ。大量生産で生み出されたギア類には食指が動かず、一つひとつに想いのこもった道具類をコレクションしている。。※「」内は尾崎さんのコメント。

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▲アキヒロウッドワークス・ジンカップ:鹿児島を拠点に活動する木工集団アキヒロウッドワークスが製作するキャンパーには定番の木製マグカップ。尾崎さんはこのジンカップを家でも普段使いしているそうだ。

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▲ロッドプロダクツ・殴シェード:ゴールゼロ用の木製ライトシェード。オーク、ウォルナット、ウェンジの3種があり、尾崎さんの愛用するモデルはウォルナット製。一つひとつ職人の手作業で名栗加工された品。「木の温かみがお気に入りのポイント」。

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▲オマハディデイ×ヌー・サーモス保冷缶カバー、背水の陣:左はオマハディデイを主宰する中村さんと、ヌーの中川さんにサインをもらったというサーモス保冷缶カバー。右は大切な方からのプレゼントというヌー製木製ホルダー(背水の陣)。

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▲ハイク・アヤノトサキ:オマハディデイを主宰する中村さんらが中心になって製品を生み出すハイクの革製ボトルカバー。作り手からモノづくりに対する想いを聞いた上で、「いずれ自分に子どもが生まれたら譲り渡していきたい」と購入した逸品。

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▲ヌー(GNU)・漆刻、漆箸:滋賀県を拠点にしたヌーの漆加工品である箸と名木を使ったまな板。「漆の美しさを教えてもらえたまな板(漆刻)と、ワークショップで自ら漆体験をして出来上がった漆箸」。

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▲スノーピーク×マウンテンリサーチ・A.M.ケトル:キャンパーに人気の高いスノーピーク×マウンテンリサーチのコラボモデル。尾崎さんはアシモクラフツ製グリップを装着してカスタマイズ済み。

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▲Sウッドワークス×タープ・トゥ・タープ・ウッドラウンドボード:オーク材を贅沢に使った円形の木製ボード。カッティングボードやディスプレイベースとしても使用できる。長く使い込むうちにウッドの表情が変化していく、育てていけるボードだ。尾崎さんにとって、大好きな2ブランドのコラボ作品でもあるそうだ。

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▲ケーラー・No.209:炭鉱作業で使用されてきたマイナーズランプ(miner=鉱夫)。英イートーマスアンドウィリアムスやJDバーフォード製がよく知られているが、写真は珍しい米ケーラー製モデル。「パラフィンオイルの優しい光がたまらないです」。

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▲アンプラグ・トラック・デザインマーケット・モスコ(プロトタイプ):アンプラグ・トラック・デザインマーケットの蚊取り線香ホルダーのモスコ(プロトタイプ)。作り手である健太さんから直接購入したもので、尾崎さん曰く「一生の宝物」。

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▲ステッチマスター・STM-001-GT:SOTO製ガストーチ用のレザーカバー。イタリアンレザーを使用しており、手触りが良くしなやかな質感。「経年変化が楽しめ、使うほどに渋さが増すアイテムです」。

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▲ヤングレイバー×ネルデザインワークス・結:ヤンスプーン竹とヤンフォーク竹の特別セット。尾崎さんの結婚式で、ケーキ入刀後のファーストバイトでこのフォークを使用したそうだ。「奥さんとの想い出がこもった品です」。

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▲アソビファクトリー×ゴードンアンドコナー・グレイスフル・コラボバージョン:ウォルナットの天板にホワイトのシルクスクリーンを刷ってもらったスペシャル・コラボモデル。艶消しウレタンクリア仕上げ。センター部は取り外し式でスノーピーク製フラットバーナーサイズ。「自宅でも使用しています!」。

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▲カナメデザインズ・ホリゾンタルテーブル:5つのパーツを組み立てて使用するA4サイズよりも少し小さいコンパクトなテーブル。付属のスタッフサックは表面が滑りやすく、簡単にパッキングができる。素材はウエスタンレッドシダー。「ちょっと物が置きたい時に重宝します!」。

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▲MSR・ウインドバーナー・パーソナルストーブシステム:専用ポット下部がバーナー部を覆う設計になっており、完全に閉じられた空間で燃焼する画期的なパーソナルストーブ。驚くほど早くお湯を沸かすことができる。「クッカーとバーナーがセットになっており、ガス缶もスタッキング可。風の影響を受けずにお湯を沸かせす!」。

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▲アノバ×タープ・トゥ・タープ・マルチギアボックス:その名の通り多目的に使用できるソフトタイプのコンテナボックス。写真はタープ・トゥ・タープ別注カラーのグレーモデル。尾崎さんはコーヒー関連のギアをすべてこのコンテナボックスに収納して持ち運んでいる。

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▲カーミットチェア:定番のカーミットチェアをマウンテンリサーチ製張り替えシートでカスタマイズしたモデル。「キャンプでゆったり座って過ごすための必需品」。

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▲アシモクラフツ・マキアシバッグ:アシモクラフツ製の初期の製品である薪
バッグ。「たまたまフリマを見ていて発見した品。薪バックとして使うのは、あまりにももったいなく、今は焚き火関係のツールを入れるバックとして使用しています」。

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▲武井バーナー・パープルストーブ301a:お馴染みの灯油ストーブ。301は連続使用4時間という中間サイズ。「こんなにコンパクトなのに、ものすごく暖かい! 何よりも無骨な雰囲気が好き。手が掛かる分、愛着がわくアイテムです」。

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▲ブッシュ・ド・ブラント・ブラボーワン10U:オムニーバナーをベースにカスタマイズされたブッシュ・ド・ブラント製灯油バーナー。「調理器具としても、ストーブとしても、2通りの使い方ができるのが便利。サイトの主役になる見た目も好みです」。

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▲hxoデザイン・テーブル:韓国発のスタイリッシュなアウトドアブランドであるhxoデザインのフォールディングテーンブルに、専用マットを組み合わせた品。「作り手であるkerriさんとのコラボタグも嬉しいポイント」。

PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2023
SOURCE|Camp Goods Magazine Vol.30

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