苦境に立たされた時、人は新たなる道を模索する。「FU-RIN KAZAN(以下フウリンカザン)」を主宰する長田さんも、家具職人としての腕を活かして新たなる道を歩み始めたばかり。“和”をテーマにしたキャンプ道具の数々は、伝統工芸を取り入れたキャンプギアとして、早くも話題に上っている。
コロナ禍だからこそ踏み込めた新領域
一般家庭でも良く見かける化粧合板を用いた家具。「フウリンカザン」を主宰する長田さんは、こうした住宅や店舗を対象にするフラッシュ家具を製作する家具職人のひとりだ。
ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大により受注が激減、予定されていた工事もすべてキャンセルになるなど、多大な影響を受けてしまった。
先の見えない苦境に悩んでいた時、手を差し伸べてくれたのは古くからのバイク仲間でもあった藤岡さんだった。
長田さんの作る家具職人としての腕を良く知っていた藤岡さんは、自身の趣味でもあるキャンプギアの製作を提案。ふたりで考えたのが、“和”をテーマにした木製ファニチャーの開発だ。
長田さんが生まれ育った和歌山県では、日本家屋の欄間で使用する「組子細工(くみこざいく)」が盛んだったということあり、「七宝組子」と呼ばれる伝統的な組子のパネルを製品に取り込むことを考案。
家具製作で培ったネットワークを駆使して数少ない職人を頼り、1枚作るのに数ヶ月もかかるという組子のパネルを入手。和紙をアクリル板で挟んだパネルと組み合わせて木製のヘキサコースターを作り上げたのである。
組子細工を取り入れた作品の誕生
現在はシェルフコンテナ用の天板やスライドレール、コーヒー・ドリップスタンドなど製品を拡充し、キャンプ用品ブランド「フウリンカザン」も立ち上げた。
特に木製コースターはすぐに人気となり、「二重菱」や「麻の葉」「ごま」「桜華」などさまざまなパターンの組子を採用するなどバリエーションも増やしている。
家具を製作するのに使用していた大型の工作機械の数々も、今では小さなコースターを作るのにフル稼働。フラッシュ家具の製作で培ってきた木工製作の技術をキャンプギアの製作に活かした結果、キャンプギアの売上は本業を十分に補完する存在へと伸長した。
一見すると装飾のように見える模様も、じつは「かんざし」と呼ばれるコースターの歪みを抑止するための伝統的な補強技術であるなど、長田さんの製作する製品には素人では見抜けない細かなディテールのこだわりもふんだんに盛り込まれている。
こうして出来上がった「フウリンカザン」の製品は、直営のオンラインストアで販売中。ほかにも、インスタグラムのDMや全国の取扱店を経由して入手することが可能だ。
CONTACT|FU-RIN KAZAN(フウリンカザン)
WEB|https://fu-rinkazan.net/
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2022
SOURCE|Camp Goods Magazine vol.23
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