llama(ラマ)|鍛冶屋の手で生み出される、一生を共にする道具たち

特集

トーチで炙りながら、鉄が700〜800度に達して溶ける寸前にねじりを入れる。歪まないように手作業で2回転半させるその技は、やはり熟練の鍛冶屋だからこそできるものだ。鉄を素材に自由自在に理想の作品を製作する宮本さんは、“一生使ってもらえるように”という思いで丁寧にキャンプ道具を生み出していく。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ

▲素材である鉄が溶け始める700〜800度までトーチで炙る。真夏の工房はまさに“灼熱地獄”。宮本さんは夏と冬で体重も大きく変化するそうだ。

金属を鍛錬して製品化することを鍛冶という。鍛冶屋はこうした金属製品を生み出す仕事。刀を作る「刀鍛冶」「刀工」なども鍛冶のひとつであり、古来より優れた鍛冶職人は時の権力者たちからも重用されてきた。

キャンプギアブランド「camp gear llama(以降ラマ)」を主宰する宮本和俊さんも、鍛冶職人への道を歩んできたひとりだ。

若き頃、滞在先のスペインでアントニオ・ガウディの建築物に心を引かれ、帰国後鉄を素材とするアーティストとして活動をスタート。何の経験もないまま、自宅の庭で作品の制作を始めたのが、振り返れば最初の一歩だったという。

当時は個展も開くほど精力的に創作活動をしていたそうだが、残念ながら作品を作るだけでは生活していくことができず、鉄を素材にした金属加工を生業とすべく、事業化へと取り組むことに。

すると、外構や什器などの仕事が舞い込むようになり、住宅や店舗などを対象にしたオリジナルの金属製品を生み出すユニークな鍛冶屋として人気を集めるようになった。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ

▲熱いうちに鉄を捻る。引っ張りながら捻らないと、芯がでないそうだ。まさに熟練の技である。

キャンプ用品ブランド「ラマ」の誕生

キャンプ道具の製作を始めたのは、事業が軌道に乗り、長年働き続けてきた自分へのご褒美としてランドローバー・ディフェンダーを購入したのがきっかけ。フィールド映えする一台を手に入れたことから、キャンプにも関心を寄せるようになり、やがて奥様と一緒にデュオキャンプを楽しむようになった。

仕事柄、金属加工の工程で火を扱うことも多かったため、特に焚き火の魅力にはたちまち虜になった。キャンプは宮本さんのライフスタイルにぴったりハマったのである。

やがて、市販の焚き火台では満足できなくなり、自分なりに工夫を凝らした焚き火台を製作。これがSNSを通じて話題となり、スペイン語で「火」を意味するキャンプギア・ブランド「ラマ」を立ち上げる契機となった。

作家から住宅・建築業界へのステップアップが最初の転機だったとすれば、ガレージブランドを立ち上げたのは2度目の転機。宮本さんは「住宅関連の仕事はお客さんの要望に沿って製品を作るので、自分が本当に作りたいものを生み出すことはできませんでした。キャンプギアはその反対、自分が作りたいものにお客さんが反応してくれる。ある意味、アーティストとして活動していた若い頃の思いを、今になって実現しているようなものですね」と語る。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ

▲すべての製品を素材から手仕事で完成させるというのも珍しい。「ラマ」の製品は、いずれも宮本さんがすべての作業を行うハンドメイドの逸品だ。

そんな「ラマ」の製品はどれもまさに手仕事でしか生み出せないものばかりだ。

工房では棒材の鉄を必要なサイズにカット。トーチを使って700~800度近くまで熱したのち、真っ赤に熱せられた鉄を手作業で加工していく。

「ラマ」製品の特徴となっているひねりは、鉄材を両手で引っ張りながら2回転半。芯をずらすことなく、まっすぐに伸びた鉄にきれいな螺旋状のねじりが入る。真鍮を蝋付けし、ハンマーで刻印を打ち込むのも、すべて手仕事。鉄を切るところから完成した製品を発送するまで、宮本さんがひとりで担う。

それでも「住宅用製品に比べれば、キャンプ用品は軽くて扱いやすいので、体力的にはありがたい。鉄製の階段を作っていた時は、持ち上げるのもひと苦労でしたから」と、宮本さんは陽気に笑う。

じつは最近、宮本さんはトラベルトレーラーを手に入れた。「ラマ」製品を購入した人が、一生使い続けられるように、いつかトレーラーを駆って全国を巡りながら、自分の生み出したキャンプギアを無料でメンテナンスしてあげるのが夢なんだ、という。

そんな日がやってくる事を思い描きながら、今日も宮本さんは鉄を鍛錬していく。宮本さんの無骨な手から、「ラマ」の作品はかくの如く生み出されていく。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|焚き火台タイプ3
SIZE|W380×D380×H230mm(組み立て時)
5枚の鉄板を組み合わせる、組み立て式の焚き火台。サイドに通気孔が設けられており、燃焼効率もいい。燃焼後の灰が焚き火台の中央に落ちて溜まる設計で、掃除も楽々。専用ロストルと持ち運びに便利なハンドル付き。重量は約6.2kg。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|テーブルクランプ・レッグ
SIZE|L400mm
好みの天板と組み合わせるテーブル用の二股レッグ。クランプ部分に天板を挟み込むだけでサイドテーブルが完成する。革紐がアクセント。なお、写真の天板は付属しない。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|中華フライパン
SIZE|φ220mm
1.6mmの鉄板をガス炉で熱した上で叩きあげ、きれいに整形した中華鍋。味のある独特な形状と、握りやすく加工された持ち手が特徴。オリジナルの麻袋と五徳のセットは別売り。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|薪割りクサビ
SIZE|L220mm
薪割り用のクサビ。薪の上面に差し込んでハンマーで叩くと、簡単に薪を割ることができる。斧がなくても小割りが可能になる。薪をしっかりと固定させて使用したい。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|薪箸
SIZE|L450mm
長く使えるように素材にもこだわった鉄製の薪ばさみ(火ばさみ)。収納時は付属する革紐で留めることができる。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|テーブル
SIZE|W300×D300×H330mm(組み立て時)
2段階で高さを調整できるスチール脚のサイドテーブル。天板は3種類の中から好みの素材を組み合わせることができる。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|ペグ
SIZE|L300mm
長さ30cmの鍛造ペグ。真鍮を蝋付けして、llamaのロゴを刻印済み。ペグの一本一本まで手仕事で生み出される逸品。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|レードルフライ返し
SIZE|L340mm
鉄製のフライ返しとレードル(おたま)。中華鍋同様、手作業で鉄を成形して製作されるハンドメイド製品。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|自在金具
SIZE|65mm
オリジナルの自在ロープ用金具。1点1点に「llama」の刻印入り。カラーはピンク(銅)とイエロー(真鍮)の2色。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|ドリップスタンド
SIZE|W300×H150mm(組み立て時)
ブラスタイプ、カッパータイプコーヒー用のドリップスタンド。上部に好みのドリッパーを置いて、ハンドドリップのコーヒーを楽しむ。カップは高さ150mmまで、ドリッパーは幅85mmまで対応する。使用後は折りたたんで、コンパクトに収納できる。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|ポッティングスティック
SIZE|L300mm
真鍮製の鍋敷き。3本の平板を絞って(曲げて)組み合わせており、広げると鍋敷きとして使用できる。スティックを広げる角度で好みのサイズに調整可能。

camp gear llama|キャンプギア・ラマ
MODEL|S字フック
SIZE|L120mm
スライドして使えるS字型の多目的フック。収納時はおおよそ半分の65mmに収まる。

camp gear llama
camp gear llama|キャンプギア・ラマ本業は鍛冶屋。家具や店 什器、外構などをアイアンクラフトで仕上げる職人だ。奥様は輸入雑貨や衣料品を取り扱うセレクトショップ「ソルイソンブラ」を経営する。なお、工房は「ラマ」製品も取り扱うショップに隣接している(写真)。

CONTACT|camp gear llama(キャンプギア・ラマ)
WEB|http://www.solysombra.jp
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2022
SOURCE|Camp Goods Magazine vol.23

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