「パティーナ」は福岡県宗像市を拠点に活躍する小屋ビルダーである。世界文化遺産・宗像大社のすぐそばに展示場を兼ねた工房を構えており、大小さまざまな小屋を製作・販売している。ここで紹介すのは、その「パティーナ」を主宰する奥平さんがプライベートで建築したもの。将来はガレージとしても活用できるように、間口を大きくした小屋は、趣味のヴィンテージ・コレクションで埋め尽くされたスペースだ
ルート66は1926年に制定されたアメリカ初の国道のひとつ。イリノイ州シカゴを起点にカリフォルニア州サンタモニカまで、総延長は3755km。東西アメリカを1本の道で繋いだ、かつての大陸横断道路だ。
その道筋にはダイナーやカフェ、モーテルなどが点在し、煌びやかなアメリカン・カルチャーの象徴として、さまざまな映画やテレビ番組の舞台にもなってきた。このため、今でもルート66といえば黄金期のアメリカとそのイメージを重ねる人は少なくない。
小屋を専門にするスペシャリスト、「パティーナ」を主宰する奥平さんもまた、そんなかつてのアメリカン・カルチャーに魅了されたひとりだ。 福岡県宗像市の郊外に建つ自宅はマサチューセッツ州ボストンにある実際の街並みを模したという美しい住宅街の一角にあり、広々とした庭には、古びてはいるが立派な小屋が建築されている。
長辺側にはカバードポーチ、短辺側には観音開きの大きな開口を備えたこの小屋は、奥平さんがセルフビルドで建築したものだ。 内部はおおよそ23帖と、小屋としてはかなり大型ではあるが、古材を上手に使うなど、基本的な作りは「パティーナ」で製作・販売されているものと変わりはない。
唯一、躯体の建築方法は大きく変えており、下半分を梁と柱で強度を保つ木造軸組工法とした上で、上半分は2×4工法を転用し、梁や柱を極力省いた構造としている。これは内部を吹き抜け造としたことから、室内から構造材が目に付き、軸組工法ではどうしても和風に見えてしまうというのが理由だ。
南側には約6帖ほどのスペースの中二階を設け、階下にはバーカウンターも設置。室内には趣味で収集した数々のヴィンテージ・コレクションを飾っている。まるで1950~1960年代のアメリカの暮らしをそのまま再現したかのようなスペースは、よりリアルに見せるために現代的なものはすべて隠されているのも特徴のひとつだ。
配電盤は板で囲み、隠しきれないエアコンの設置は断念。代わりに年代物の首振り扇風機が忙しく働いている。
存在感のあるジュークボックスは1985年製のワーリッツァー(Wurlitzer)。キャンディマシンは25セントコインで使う1950年代のヴィンテージ。窓際で優しい日差しを受けているのは、1910年製のシンガー・ミシンなど、どれも貴重なコレクションである。
まるで映画のセットでもあるかのようにも見えるこのスペースは、将来ガレージとしても転用できるように床下を補強済み。いつか第一世代のシボレー・コルベットを手に入れて、奥平さんのコレクションは完成するそうだ。
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WEB_https://ameblo.jp/garden-pa-2012/
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2021
SOURCE|小屋 ちいさな家の豊かな暮らし Vol.5
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