風の音、湖面のさざなみ、そして薪が弾ける音まで、ひとりで焚き火を囲んでいると、意外にも誰もいない湖畔が賑やかな音に溢れていることに驚かされる。些細な音やわずかな光の変化も、ひとりぼっちだからこそ、気が付くのかもしれない。
夕暮れから夜に変わる時間帯。そして、夜が開け、朝陽が上る前のひと時。どちらも空がもっとも綺麗に映る、「時の境界線」だ。
何も無理してひとりでキャンプをすることもないだろうが、それでもひとりでテントの中にうずくまっていると、いつもより少しだけ周囲の変化に敏感になる。
音はもちろん、光の移いにも過敏に反応してしまう。「時の境界線」を越える際は、特にそう感じることが多い。
テントで過ごす夜の、もっとも美しいひと時だからだろうか。
“ひとりでいる”というだけなのに、家の中にいたら気にもならないような周囲の変化を感じてしまう。でも、そんなちょっとしたことに気付けるのが、ソロキャンプの楽しみのひとつだ。
クルマの運転も同じ。パッセンジャーシートに家族や恋人がいると、自然と会話に夢中になってしまい、音や振動に対する反応が鈍くなる。
でも、ひとりでステアリングを握っていると、排気音やロードノイズ、ステアリングからの些細なキックバックすら感じ取ることができる。
純粋にクルマを操ることを楽しみたいなら、ひとりで運転するのが賢い選択だ。
東京に大雪が降る前々日、アピオのジムニーコンプリートカー・ナローシエラに乗り込み、西湖へと向かった。
真冬のキャンプ場は数組の先客がいるだけ。キャンプブームの最中とはいえ、日中でも吐く息が凍るような日の湖畔は、ひっそりと静まりかえっていた。
夕闇が迫ると、ポツポツといたデイキャンパーたちもテントをたたみ、空が真っ赤に染まる頃には、遂に誰もいなくなった。
ひとりぼっちの夜の始まり、だ。
燃えるような夕日が映り込んだ湖面が金色に輝いた後、やがてランタンの火をゆっくりと落とすかのように、空は少しずつ暗さを増していく。
闇が濃くなるほど、五感は敏感に研ぎ澄まされていく。
陽がある時には気にならなかった薪が弾ける音も、月あかりの中では響き渡るようにボリュームをあげる。風の音も、水面のせせらぎも、誰もいない湖畔では賑やかに聞こえてくる。
湖畔で過ごす、ひとりぼっちの夜は、風を遮るテントや、いざとなればどこへでも走っていけるアピオ・ジムニーも、余計に心強く感じるものだ。
「時の境界線」を越えると湖畔の空気は一段と厳しさを増し、静かに更けていく。
夜はまだまだ始まったばかりだ。
ABOUT APIO|アピオとは
神奈川県にあるスズキ・ジムニーのスペシャルショップ。長い経験から培われた経験と技術力を背景に、ジムニー用パーツやカスタム・コンプリートカーの企画・製作・販売を得意とする。もちろん、新車販売、車検まで対応しており、ジムニーのことならワンストップで対応できる頼れる存在。
CONTACT|APIO
WEB|https://www.apio.jp
PHOTO|KAZUTOSHI AKIMOTO
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2022
SOURCE|Camp Goods Magazine Vol.24
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