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特集|次世代の匠によって生み出されていく樫の黒炭|スミヤキッカス

時には20日間以上もの時間を要するという手間のかかる樫の黒炭作り。最高のバーベキューをしてもらうために、素材の味を徹底的に引き出す木炭を作ってみたかったという「スミヤキッカス」の新谷さん。神奈川から移住した長崎の山あいの集落で、彼は今日も炭窯に火を入れ続けている。

キャンプで楽しむ食事といえば、やっぱりバーベキュー。普段よりもちょっとだけ奮発して、良い肉を木炭でじっくりと焼き上げるのは、やはりアウトドアならではの醍醐味だろう。

もっとも、バーベキューは好きだけど、肉を焼く時に発生する煙が苦手という方も少なくない。じつは煙が発生する原因は2つある。ひとつは木炭そのものの品質に起因する煙。もうひとつは肉から滴り落ちる油が木炭などの熱源にかかることで生じる煙だ。近年はこうしたベーベキュー時の煙を減らすグリルも販売されており、油が直接熱源にかからないように工夫された製品も見かける。

木炭そのものから発生する煙も、じつは良質のものを使用することで減らすことができる。良質な木炭は不要なガスや油が完全に抜けて炭化していることから、燃える際に発生する煙が少ないからだ。しかも良質な木炭は炎をたてずに遠近の赤外線効果により食材の芯までしっかりと火を通し、より一層美味しく焼き上げることができるのだ。

そんな良質の木炭に心を奪われ、神奈川県から単身移住し、長崎県の山中で昔ながらの炭焼き職人として腕を振るっているのが、「SumiyaKickass(スキヤキッカス)」の新谷さんだ。 都会の生活で体調を崩してしまった新谷さんが、縁もゆかりもない長崎県へ移住したのは海も山もある自然に囲まれた環境だったこと。加えて、炭焼き職人の高齢化と後継者不足という問題があることを知ったのがきっかけだった。

長崎県の山あいの集落で代々継がれてきた炭焼きの仕事は、当時炭窯を構える5人の職人たちにより、細々と続けられていた。新谷さんはそのうちのひとりに師事し、以来4年間にわたって師匠とともに良質の木炭を生み出し、現在は独立して製炭業を営んでいる。

新谷さんが製炭するのは、ホームセンターなどで見かける低廉な木炭とはまったく違ったものだ。大量生産される海外産の木炭の多くは短期間で出荷するために、焼入れの時間が短くなり、結果的に炭化が不十分でガスや油が残留しているものが多いそうだ。対して、新谷さんは14~20日の時間を費やして木炭を完成させる。一般的に良質の木炭の原木には「櫟(くぬぎ)」「楢(なら)」「樫(かし)」が適しているといわれる。中でも「樫」はもっとも堅く、密度の高い樹種である。前述した安価な製品はマングローブなどの加工のしやすい原木を用いることが多い。「樫」は長さを揃えて窯に入れるまでの過程でさえ、チェンソーを使わないと加工ができないほど手が掛かる。

窯に入れてからは7~10日間かけて焼き上げ、不要な油やガスが完全に抜け出し、炭化が完了したタイミングを見計らって火を落とす。そこからさらに7~10日間かけて、今度はゆっくりと冷ましていく。完全に炭化したタイミングを見分けられるようになるまで、新谷さんも時間がかかったそうだ。

“たかがバーベキューの木炭”と、嘲笑する人がいるかもしれない。でも、こうして出来上がった「スミヤキッカス」製の木炭を使って、一度バーベキューをしてみるといい。一度でもその味を知ってしまったら、おそらく二度と他の木炭を使いたくなくなるだろう。

「キャンプ道具がどんどん進化していくのに、木炭だけは昭和のまま。そんな状況に少しでも変化を生み出せたらいいな」と語る新谷さん。誰も気にかけなかった木炭に注目し、付加価値を高めて、国内の製炭業を次世代へとしっかりと受け継いでいきたい。そんな彼の想いを込めた極上の木炭は、少しずつファンを増やしつつある。

スミヤキッカス(SumiyaKickass)
WEBサイト https://sumiyakickass.com

PHOTO|SumiyaKickass
TEXT|KAZUTOSHI AKIMOTO
PUBLISHED|2020
SOURCE|Camp Goods Magazine vol.12

Copyright © 2020 Camp Goods Magazine
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